現在の天台宗
寶戒寺 (公式サイト) の一帯に邸宅 (通称を小町亭) を構えたのは二代執権に就任してからの
北條義時。それまでの義時は大倉御所南の金沢街道 (六浦道) に沿った洋菓子店
ニュージャーマン (閉店しちゃった!) 雪ノ下店(
地図)付近にを住んでおり、小町亭を建てたのは元久二年(1205)閏7月に父の
北條時政 が失脚させた以後だろう。
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※大倉亭の位置: 関取場跡の碑(サイト内リンク)付近が義時の大倉亭跡らしいが住宅密集地なので発掘調査は不可、
現地の風景。
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小町亭に移った後の大倉亭は後に三代執権を継承する嫡子の
泰時 が住むとともに義時の執務場所を兼ね、建保七年(1219年・5月27日に改元して承久元年)1月27日に八幡宮で
三代将軍
実朝 が暗殺された際にはここから指揮を執っている。元仁元年(1224)6月13日に義時が息を引き取ったのも同じ大倉亭である。大倉亭は泰時以後も使われたが、執権の
正式な執務場所は幕府が滅亡する元弘三年 (1333) まで、小町亭が使われていた。小町大路を隔てて将軍御所と一体化していたからね。
右:寳戒寺から若宮大路までの鳥瞰図 画像をクリック→拡大表示
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寶戒寺の本尊は京の仏師憲円が貞治四年 (1365) に彫った木造地蔵菩薩坐像で、他に155cmの歓喜天立像
※や二世住職の惟賢和尚坐像を収蔵。9月上旬の境内に白萩が咲くことから「萩の寺」 (検索すると画像多数) と呼ばれる。鎌倉には花を売り物にする寺社が多く、それを目当ての観光客もまた、多い。名月院のアジサイ、報国寺の竹林、妙法寺の苔、安養院のツツジ、瑞泉寺のキキョウ、段葛のサクラ、八幡宮の花ハス、など。
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※歓喜天立像: 本堂ではなく別棟の歓喜天堂に祀る秘仏。象の頭部を持つ二体が抱き合っている。素人の目には異様だがイワシの頭も信心、だ。
拝観はできず、小穴から厨子を覗いて納得するしかない。
wiki 画像 を参考に。
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石清水八幡宮収蔵の「足利尊氏寄進帳」(鎌倉幕府滅亡2年後の建武二年 (1335) 3月28日付)に
「北條高時慰霊のため邸の跡に後醍醐天皇が建てた」 の記載がある。円観慧鎮
※を開山和尚にして建立を目指したが実際には数年後 (1339年以後) に
足利尊氏が建て、全体の姿が整ったのは二世の惟賢和尚(尊氏の二男)が灌頂(密教の重要儀式)を行った文和三年 (1354) 頃と推定されている。
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※円観慧鎮: 鎌倉末期〜南北朝時代の天台宗の高僧。北朝の後伏見・花園・後醍醐・光厳・光明天皇の帰依を受け五国大師と呼ばれた。名は慧鎮
(恵鎮) 、
後醍醐天皇 の倒幕計画に加わって祈祷を行い、南北朝時代には北朝に属して活躍した。太平記編纂の責任者を務めた、とされる。

左: 八幡宮の前から金沢街道を東へ300m先で道路がカーブする突き当りが寶戒寺の入口。左に天台宗圓頓寶戒寺の太い石柱が立ち、門前を右に進むと
歴史に彩られた小町大路(辻説法通り。小町通りではない)。大聖天(歓喜天)は夫婦男女の和合にご利益あり、だ。
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中: 大きな石を並べた参道が珍しい。八幡宮から近いこともあって秋には境内の萩見物を目当ての観光客でかなり混雑する。
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右: 参道の左側に大正七年 (1918) 鎌倉町青年会が建立した「北條執権邸旧蹟」の碑が建っている。
往時此ノ地ニ北条氏ノ小町亭在リ 義時以後累代ノ執権概ネ皆之ニ住セリ、云々と。

左: 氏寺でも菩提寺でもなく菩提を弔う意味か、門扉には北條氏の三つ鱗紋が掲げてある。拝観は8時半〜16時40分、昨今の鎌倉には稀有な志納100円だ。
ここから奥は当然のこと、犬を連れて入ることは出来ない。
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中: 寶戒寺の本堂。大正時代までは広大な敷地の中に九つの僧坊を持つ大寺だったという。
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右: すぐ裏を流れる滑川の寶戒寺橋。寺域からは直接行けず、一度小町大路まで戻って迂回する。橋の先左手は約200m先の住宅街で
行き止まりになる。ここまで来ても下流(右方向)に架かる東勝寺橋と紅葉山やぐらの入口を眺めるだけの意味しかないのだが...。

左: 寶戒寺橋から上流を。ここから大御堂橋までは500m弱、川沿いに道があれば大御堂寺跡方向に行くのが楽なのだが...残念。この橋の上で
青砥藤綱が10文の銭を川に落とし50文の松明で探させた、と太平記が伝えている。事実か捏造化は、不明。
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中: 寶戒寺橋から下流、100m先に東勝寺橋が見える。岩盤の川床を滑るように流れるので滑川(なめかわ)と呼ぶのは本当かな。
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右: 橋の突き当たり、滑川の対岸の「紅葉山やぐら」。昭和十年の発掘で鎌倉時代末期の遺物が出土している。残念ながら崩落を防ぐためモルタルと石で
周囲が固められ、内部を覗くことは出来ない。元々は寶戒寺の寺域に含まれるから北條得宗家に関わる墓所だろう。
この頁は2022年 9月 13日に更新しました。